2018年3月12日月曜日

(フォーラム)身近な病気、統合失調症

(フォーラム)身近な病気、統合失調症
http://www.asahi.com/articles/DA3S13398300.html

統合失調症と診断された長女を長期監禁し衰弱死させたとして、両親が逮捕される事件が大阪で起きました。社会も含めた病気への無知や偏見を事件の背景にみる人が少なくありません。誰でもなる可能性があり、100人に1人弱が生涯で発症するこの病気を、みなさんと考えます。


 ■事件の概要

 統合失調症と診断された長女(33)に十分な食事を与えずに死なせたなどとして、大阪地検は1月、大阪府寝屋川市に住む両親を監禁と保護責任者遺棄致死の罪で起訴した。起訴状や取材によると、長女は小6で学校を休み始め、中学は通っていない。両親は少なくとも07年から長女を自宅のプレハブの小部屋に監禁したとされる。小部屋は、内側から開けられず、監視カメラが設置されていた。長女は昨年1月ごろから、急激にやせ衰えたが、両親は、小部屋の室温を適切に管理したり、医師に診せたりしないまま、昨年12月に凍死させたとされる。発見時の長女の体重は19キロだった。


 ■自分を批判する「声」が

 どんな病気なのか。症状は人によって違いますが、大学生の時に発症した男性に話を聞きました。

 大阪府の男性(34)は2002年、大学に入学。「楽しい学生生活」を夢見ましたが、違ったといいます。

 「何とか合格した」という引け目から、授業が難しいと「やっぱりだめだ」と落ち込みました。入学半年後から下宿を始めると、下宿生のグループがすでにできていて、友達もうまくできなかったそうです。

 次第に、下宿先に引きこもりがちに。ひどい二日酔いと寝不足が重なったような疲れが一日中続き、歯を磨き、顔を洗うことさえできなくなりました。

 同時に、「声」が聞こえるようになりました。性別も年齢も様々な知らない人が数人、一日中、自分のそばに立ち、ささいな行動までずっと見ていて、その全てを批判してきました。食べようとすると「大学に行ってもいないのに、何を食べているんだ」「何もしていないのに、食うだけ食うな」と嘲笑されます。

 どう動いても批判されるため、極力動かないようにしていたといいます。「意識がない、寝ている時が一番幸せでした」

 大学2年で、親が異変に気づき、病院にすぐに連れて行かれ、「統合失調症」と診断されました。薬を飲むと、身の回りのことができるように。でも、病気だと認めたくなかったそうです。「認めてしまえば、『精神疾患の人』というレッテルを貼られ、二度と抜け出せないと感じた」。「これからどう生きればいいか」。将来に絶望して自殺を図り、閉鎖病棟に入院しました。

 退院後、家の風呂掃除をしたり、診療所のデイケアで同じ立場の人と話をしたり。自分ができることや、社会との接点を、焦らないように一つずつ増やしていきました。幻聴はいつのまにか消えていました。

 休学と復学を繰り返しながら大学を卒業。就労支援を受け、今は月1回通院をしながら、大阪のNPOでフルタイムで働いています。

 寝屋川の事件で亡くなった女性は同年代です。男性は「ぼくが幸運だったのは、親がいろいろ調べて、ぼくの状態をわかろうとしてくれたこと。発症した子と同じ目線に立ち、理解しようとしてくれる大人が周りにいるかどうかが、大きな違いを生むと思う」と話します。


 ■社会の偏見、悩む家族

 親の経験も聞きました。大阪府精神障害者家族会連合会の木村瑛子副会長(73)は、長女(40)が高校3年で不登校になり、20歳で統合失調症と診断されました。

 「育て方が悪かったのでしょうか」。医師に真っ先に聞き、否定されてほっとしたといいます。長女は「誰かがついてくる」などと言って、外出が困難に。受診を拒否した時期もありました。

 木村さんは、長女の発症後も仕事を続けました。「親が自分の時間を持ち、精神的に安定することが大切だと思う」。家族会に入ると「同じ悩みを持つ人と話せて、気が楽になった。病気への知識も増えた」といいます。長女は今、家族と一緒に外出できるようになっています。

 木村さんは「精神疾患への社会の偏見がなければ寝屋川の事件は起きなかったのではないか」と指摘します。同会の相談電話には、偏見の悩みが多くかかってきます。子どもが統合失調症になると「うちの家系には(精神疾患の人は)いない」と義理の親に言われたり、「育て方のせい」と近所に根拠のないうわさをされたり。

 同会の男性(78)は、子どもの精神疾患を知った知人に「まわりには言わないでおきます」と言われました。男性は「善意でしょう。でも、その言葉に、『精神疾患は隠すもの』という社会の偏見が見える」と話します。

 木村さんは「寝屋川の事件は行き過ぎですが、精神疾患がある家族をまわりに隠し、ひっそりと暮らす家族は今も少なくない。なぜ、そうなのかを考えて欲しい」と話します。


 ■知識持つこと、最大の予防 児童精神科医・夏苅郁子さん

 児童精神科医で母が統合失調症の夏苅(なつかり)郁子さんは、自身の経験から、「病気を知って」と訴えます。

    ◇

 私が10歳の頃、母に統合失調症の症状が出ました。優しかった母が、独り言をぶつぶつ言うようになり、夜になると「腹が立って仕方がない」と、険しい表情で、家中をぐるぐる歩き回るようになった。母が何に怒っているのか、わからなかった。母の目にとまらぬよう、布団の中で息を潜め、寝たふりをしました。一番つらかったのは、今思えば病気の症状だったのですが、母が家事をせずに寝ていることがよくあり、それを父が怒鳴りつけることでした。

 病気のことを知らなかったので、「親らしいこともせず、なんて母親だ」とか、「母が変わったのは、家庭を顧みない父のせいだ」とか、子どもながらにいろんな解釈をした。母を10年、憎みました。

 寝屋川の事件はまだ十分に解明されていませんが、亡くなった女性が統合失調症だったとすれば、起訴された親は、子どもの頃の私のように、この病気に無知だったのではないか、と思いました。だから、事件は、私にとって全然、ひとごとではありません。子どもの頃、「お母さんがああなっちゃうのは、脳の病気なんだよ」と誰かが教えてくれていたら、気が少し楽になり、母への接し方も変わっていた。だから知って欲しいのです。

 統合失調症は脳の病気で、その原因は、十分に解明されていません。ストレスや、遺伝の影響があるといわれますが、こうした影響が確認できない人が発症することもあると感じます。発症しそうな時に、支えてくれる人に出会えて発症しなかった、などの出会いの「運」も影響すると感じます。

 あなたの子どもや孫、配偶者がなるかもしれません。「なったらどうしよう」とおびえるのではなく、病気のことを知って、「なったらどんなことをしてあげるか」を考えて欲しいと思います。

 患者さんは、病気によって怖い思いをしている場合が多い。幻覚や妄想は、「おまえは馬鹿だ」などと責められる内容が目立つ。言動が「普通」と違うように見えても、本人なりの理屈があると感じます。「家族が別人と入れ替わった」という、よくある妄想では、本人に聞くと、家族関係に問題がある場合が少なくない。「家族が別人のように優しくなってくれたら」との願いが、妄想になっているのです。

 病気の知識がないと、家族でさえ、患者さんを「わけがわからない」と思ってしまうかもしれない。家族からも否定されて孤立し、病状が悪化しかねません。

 発症した時、使える手立ても知って欲しい。薬や、保健師・精神保健福祉士らへの相談や就労支援、障害年金などがある。回復の程度は人によって様々ですが、適切な治療で症状を安定させている人、生き生きと暮らす人も少なくありません。公務員として働く人もいます。

 身近な病気なのに、「ひとごと」だと思っている人が多い背景に、教育の問題があります。10代後半から20代が発症のピークなのに、日本の義務教育は保健体育で精神疾患を教えていない。私も含めた精神科医療の専門家で、中学の保健体育の教科書に統合失調症などの精神疾患を載せようと活動しています。一番最初に異変に気づくのは、もしかしたら本人かもしれない。「教科書で習ったのって、もしかしたらこれかな?」と。それが最大の予防になると思うのです。


 ◇寝屋川の事件をきっかけに、統合失調症の取材を始めました。どんな病気なのか、そして発症した人や家族が感じている生きづらさについて、自分自身が無知だったことを痛感しました。今の世の中に、どんな問題があり、今回の事件のような悲劇を再び起こさないために、何が必要なのか。

 病気への偏見、支援制度、医療のあり方なども含めてご経験やご意見をお寄せください。(長富由希子)

2018年2月16日金曜日

困窮家庭の7割「子の習い事断念」 支援団体が実態調査

 経済的に苦しい家庭の保護者の約7割が、子どもの塾や習い事をあきらめたことがある――。こんな実態が、子どもの貧困問題に取り組む公益財団法人「あすのば」の調査でわかった。貧困が子どもの暮らしを大きく左右していることが改めて浮き彫りになった。
 同法人は低所得世帯の子どもの進学や卒業時に3万~6万円を支給している。調査は昨年10~12月、昨年度の支給世帯に調査票を郵送。小学生~大学生世代の子どもがいる保護者959人(回答率54%)、高校、大学生世代の子ども547人(38%)から回答を得た。
 保護者に、経済的な理由から子どものことであきらめた経験を複数回答で尋ねたところ、「塾・習い事」が最も多く69%に上った。「海水浴やキャンプなどの体験」の25%、「お祝い」の20%が続いた。
 子どもにも別の回答の選択肢を示し、同様の質問を実施。「洋服や靴、おしゃれ用品などを我慢した」が52%で最多で、「スマートフォンや携帯を持つのを我慢した」が30%、「学習塾に通うことができなかった」が29%、「スポーツや習い事などができなかった」が27%だった。
 (西村圭史)http://www.asahi.com/articles/DA3S13361557.html

2018年2月1日木曜日

全国で増え続ける空き家を福祉施設などニーズが高い施設として民間の事業者などが活用しやすくするため、国土交通省は建築基準法を改める方針を決めた。耐火基準や用途変更の手続きの規制を緩和し、転用を後押しする。通常国会に改正法案を提出する。
 空き家は人口減少などで年々増え、2013年時点で全国に約820万戸。20年で約1・8倍に増えた。近年も増え続け、ごみの不法投棄や火災など、防犯や防災面での悪影響が社会問題となっている。
 各自治体が対策を模索するが、解体には費用がかかり、人口減で住宅として再利用するニーズは乏しい。
 一方、飲食店や保育所、高齢化により福祉施設などにはニーズがある。だが、例えば3階建ての戸建て住宅を別の用途で使うには耐火対策の強化など行政上の規制が厳しく、改修すると建て替えと変わらない費用がかかる問題があった。
 全国に100万戸超ある3階建て戸建て住宅は都市部などの住宅密集地に多く、高齢化などで空き家になるケースも多い。そこで国交省は、3階建て戸建て住宅を転用する場合、延べ面積が200平方メートル未満であれば厳しい耐火対策を求めず、警報設備やスプリンクラーの新設だけでよくする。現状と比べ費用は10分の1程度で済む見通しだ。
 また、耐火基準などを確認する「建築確認」を、大半の戸建て住宅の用途変更の際に不要とする。建築確認は現在、延べ面積が100平方メートルを超える場合(全戸建ての約7割)の用途変更の際に必要とされてきたが、対象を200平方メートル超に絞る。これにより、戸建て全体の9割で建築確認が不要になる。
 国交省は、建物の大きさと火災時の避難にかかる時間との関係を専門家を交えて科学的に検証した結果、今回の範囲で規制を緩和して支障は無いと判断したとしている。
http://www.asahi.com/articles/DA3S13339924.html