2017年3月29日水曜日

田川英信さんの論文、納得します。

生活保護のケースワーカーや担当係長を15年以上、務めてきました。利用者(受給者)の相談に乗り、家庭訪問もしながら、支給手続きをする仕事です。

 小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな」とプリントしたジャンパーを着ていた問題を知ったとき、どの自治体で起きてもおかしくないと感じました。見えないジャンパーを着ている職員は、全国にいると思っています。

 問題の根底には、生活保護の窓口となる福祉事務所の脆弱(ぜいじゃく)さがあります。職員の質の担保ができていないのです。

 ケースワーカーの仕事は本来、専門性や経験が必要です。年金や介護保険など他制度にも通じていなければならず、住居確保のため不動産業者との人脈も大切です。しかし、新人や若手が数多く配置され、「素人」ばかりの福祉事務所も少なくありません。

 相手とあつれきが生じることがあり残業も多く、一般的には不人気職場です。希望者が少ないため、「まず現場経験を」と新人が送り込まれる。在任は全国平均で3年程度と言われ、1年で異動という自治体もあります。専門性も経験も蓄積されません。

 研修も不十分です。よくわかっていない先輩が後輩を指導するので、誤った認識や対応が受け継がれます。職員本人もつらいし、なにより受給する人が気の毒です。

 職員数も足りません。社会福祉法に示された標準数は、市部では利用者80世帯に1人。都市部では守っていない自治体も多く、1人で百数十世帯を受け持つことも。私の経験でも、90世帯を超すと事務処理で手いっぱいです。小一時間席を外しただけで伝言メモが机に何枚も置いてあるような状況になります。

 話もじっくり聞けず、相手も心を閉ざす。不正受給は許されませんが、収入申告についての説明不足が原因の場合もある。仕事のトラブルを相談したくても誰もが応対中で、SOSも出せない。孤立して「寄り添う支援なんて無理だ」と悲鳴をあげる職員も少なくありません。

 ケースワーカーは正義を振りかざすのではなく、ともに苦悩し考える存在です。「パチンコで保護費を使い果たした」という人を非難しても問題は解決しません。依存症なら治療につなげ、家計管理の問題なら保護費を週払いに分割する対応もあります。忙しすぎて専門性が乏しければ、そんな支援はできません。

 生活保護の正しい運用のために、社会福祉士など福祉専門職の配置を増やし、研修を充実させ、人材を育てていくべきです。以前、「職員には100人に1人の受給者でも、利用者にはたった1人の担当ワーカー」と言われ、胸に響きました。本来は誇りを持てる仕事なのです。(耕論)生活保護の底流に 稲葉剛さん、大竹文雄さん、田川英信さん
http://www.asahi.com/articles/DA3S12865033.html


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